2017年8月30日水曜日

密な時間




静岡林業研究会・木工部会の皆様がスプーンを刳りにやって来てくださいました。
この度は持ち込み企画で決まったお話なのですが、工房スタイルとしても予てより刳物のワークショップを開講したいと計画を進めていましたので、望むところでした。

持ち込んでくださったのは企画だけでなくて、素材も。



立派な檜の枝です。
とあるお寺の境内に立つ檜だそうで、樹齢も相当なものとお見受けします。

こんなに目の詰まった蜜なヒノキは初めて。
普段専らチェリーやメープルなどの比較的硬い木でスプーンを作っているぼくとしては、ヒノキと聞いて当初は少し肉厚のデザインに変更しようかと思っていたのですが、それは野暮でした。

年輪の一層一層に風雪に耐えた時間がギュッと詰まっていて、見事に引き締まった素材でした。
イチイを彷彿とさせるその肌は、硬いけれど粘りがあって削りやすく、ナイフで新たな面を削り出すたびに光沢が生まれるのです。






通常スプーンを作るときは、万力やクランプでしっかり固定できるように、角材の部分を残しながら、匙のくぼみ ⇒ 後頭部 と削り進め、その後柄の形を切り出すのですが(上写真参照)、今回は時間短縮のためにスプーンのアウトラインを切り出しておきました。
これをクランプで作業台に固定して、やはりくぼみから刳り始めていただきます。


使用した道具を作業順に紹介いたします。




Flexcut KN23 8mm スコープ RH (ライト)
Flexcut KNL23 8mm スコープ LH (レフト)

右利き用・左利き用、という訳ではありません。
素材の形と繊維方向、そして刃を動かす向きなどによって使い分けます。
このスコープナイフは丸刀でありながらストレートナイフのような感覚で使えるのが特徴。
写真ではクランプで固定した作業の様子を紹介していますが、素材を手に持った状態での作業ではさらにそのメリットを発揮します。




モーラ #162S ベントナイフ R15mm



モーラ #164S フックナイフ R12mm

ベントナイフは諸刃(もろは:両側に刃が付いている)で、フックは片刃。
ベントの利点は刃を両方向に動かして削れること、フックは刃の背を指で押すことができること。
スコープナイフと同様、素材を手に持った作業にも適しています。




モーラ #120 ストレートナイフ 刃長 60mm 

80mmのタイプもありますが、刃渡りが短い方が安全性も操作性も高いです。
カトラリーのような小さな作品の場合にはなおさら。




没頭すること3時間。密な時間でした。
形、面取り、逆目ぼれ。
視点が絞られてくると、「もっとよくなるはず」の気持ちが深まり、のめりこむものです。


お好みでオイルで仕上げ



アウトラインが決まっていても、個性はにじみでるものです



できあがった作品は、これからは道具として、新たな時間を蓄積していくでしょう。



2017年8月25日金曜日

1UP ⇑



8月23日に発表されました新商品、工房スタイルでも展示しています。

 POWERMATIC 木工旋盤 4224B (三相200V仕様) 
   ⇑ 3520Bのさらに上を行く最上位機種
 深堀り延長棒(超硬エッジ・ファインカットビット専用    
   ⇑ 届かなかったソコにまで届く
 KERV トリマーベースプレート (マキタ/日立用)     
 KERV トリマーベースプレート (リョービ/ボッシュ用)
   ⇑ トリマーの可能性を高める
 OTORO 着脱自在ペンプレス 
   ⇑ 押すだけでない、引き抜くこともできる              
 Veritas スクラブプレーン + 替刃3種         
   ⇑ 粗仕子鉋として、また、個性的な表面仕上げにも
 KDS メタルバークランプ 150・300・450・600  
   ⇑ にぎにぎすると締まるタイプでメタル
 マグネットレーザーマーカー              
   ⇑ 磁石が付くところならばどこでも
 Titebond 液体にかわ木工用接着剤 272g (8oz) 
   ⇑ 待ちに待ったニカワが再登場


いずれも木工生活をレベルアップしてくれそうなものばかり。
詳しくはオフ・コーポレイションのサイトまで http://www.off.co.jp/
でも、実物確かめたい方はぜひ工房スタイルにお越しください。


2017年8月22日火曜日

ダッチオーブン@市民の森



日曜日、行ってきました静岡市 高山 市民の森

お盆休みもずっと天気が悪かったので消化不良のところ、

カンカン照りでなく雨も降らずいい日和でした。


まずは成果から、 ドン!

うんまーいダッチオーブン料理、みんなで作りました!

バカうまそうでしょう〜?😊




何をして来たかと言いますと

つい先日、閉店後遠藤氏と静岡気分(静岡市の広報紙です)をパラパラしていて

「林業家に学ぶアウトドア」って魅力的なタイトルのワークショップを発見、

こここれわ。私一個人としても一家のお父さんとしても なんてナイスなイベント!

翌日もう応募締め切り日だったので即応募。間に合いました〜。



市の中山間地振興課の催しで林業研究会がレクチャーするワークショップ。

形は違えど、いつもはワークショップやってる側の私も今日は嫁子供と家族で参加、

超ナイスなワークショップ、アットホームな感じでいい休日を過ごせて

なんか妙に嬉しい〜🤗






この静岡市の市民の森は結構広大なお山の散策コースがあって豊かな動植物と触れ合え、

同時に山のこと、林業のことをもっと一般の方に知ってもらおうという施設。

と勝手に解釈しましたが合ってますでしょうか??



正直、高山って山も、ここ水見色って地名も、そしてこの市民の森の存在も。

地元静岡市民にして恥ずかしながら知らなかったです!!!



しかし実際、ただ美味しいご飯が食べられただけでなく林業のこともまたほんの少し、

理解が深まったと思いますし、「いいとこ見っけた!また機会があったら遊びに来たいな」

と思ういいとこで。 いいワークショップ体験ができました。ありがとうございました。



























2017年8月19日土曜日

マンツー旋盤



お盆もあけ、営業再開しております。

今日はいつもの旋盤のうつわ削り教室でしたが

予約は1名だったので思う存分やってもらいました。


長野からOさん、はるばるありがとうございました。

さすがはすでにRIKONミドルオーナー、

で旋盤いつもやってるということで

こうやってください、といえばすぐできちゃいます。






こんな、わざと皮の部分が残るようなとり方でなんなく仕上げました。

また何か聞きたいことがあればいつでも聞いてください。

お疲れ様でした。






次回開催、決まってるのはとりあえずは9/30(土)。

まだ空いてます。

興味のある方はお問い合わせください。

2017年8月7日月曜日

7/29~8/5、お盆前のワークショップ4コマ


今月は今週11日(金)から来週の16(水)までお盆休みをいただきます。

ご不便をおかけいたしますがよろしくお願いいたします。


その盆休みを前にただいまワークショップ強化月間の工房スタイルの先週~今週は

連日の猛暑に負けじと「はじめてのウッドターニングのワークショップ」がアツいです。



興味のある方はお気軽にお電話ください。

日程さえ合えばご希望のスケジュールで開講します!



それでは先週今週の教室の様子、まずは7/29(土)から。

ペンターニングの教室に続いてうつわ削りにもご参加のGさん、初めてのうつわなのにogeeシェイプの凝った形に挑戦。
金工の方では慣れてるから結構テクニシャン!





もう一回やってしっかり覚えて帰りたい!と意欲的なMさん、完成させたうつわはあまり薄くすると安っぽいし平らに近いアールの方が使い勝手がいい!と、理想の形を見事に形にしましたね!まるくて、しっかりしててかわいいです





続いて8/3(木)、うつわ削り。
完成写真は撮り忘れました。
KさんとMさん、しつこくしつこく、ボウルガウジでどうやったらきれいにカットできるのか、一緒に頑張りましたね! お疲れ様でした。






8/4(金)、ペンターニング。はゆとり世代のKさんとマンツーマンでした。
友人の結婚式のプレゼント用にオリジナルのペン、しかもペンづくりのメイキングムービーを撮りたかった、ということなので運よくマンツーマンだったので楽しくやらせていただきました。


メイキング撮るならプロジェクトX風にしたらいいんじゃない?とおっさんは提案したら
「いや、それちょっと違うんすよねー」と若者にクールに一蹴されました!笑

最終的にきれいなのができました。いい結婚式になるといいですね。







で8/5(土)、漆塗りが好きでやってて塗るだけでなく削るほうもちょっとやってみようかとご参加のNさん、と、本格的に旋盤始めるぞ!と今まさに熱意に燃えているMさん。












皆さんお疲れ様でした。
ワークショップでお付き合いしますのは素人に毛が生えたくらいの私ですがワークショップの時は私も一生懸命頑張ります。

一回参加しただけで完璧にマスターできるかというとそういうものではないと思いますがそこはサッカーとかバイクとかほかの遊びと同じです。
奥が深いと思いますが、だからおもしろいんだと思いますよ。 今後楽しんでいけてくれたら幸いです。

2017年8月5日土曜日

ボロボロの靴


よりによって激しい風雨、しかもアラレ混じり。
丑三つ時過ぎの闇の底、疲労と眠気と寒さと雨のせいで、泥水にぐっしょり浸かった雑巾のような身体が、ようやく辿り着いた小屋の軒下にべちゃりと落ちた途端、それから一向に振り絞る力が湧いてこない。

山頂まであと一合。その一合が、長い。

ぼくにとって8度目となる、そして20年ぶりの富士登山は、中学生の娘たちにとってはデビュー戦だった。
全く気の毒なコンディションとなってしまった。

越冬のニホンザルのようにひと塊になって少しまどろむ。
気が付くと風雨は弱まり、闇が薄れ始めていた。
振り絞るでもなく、溶岩に身を引き摺るように再び登る。

山頂についたころには日の出時刻を過ぎていた。
もとよりこの天候ではご来光を拝むことは叶わず、ただ空気が黒から白へ変わっていった。


富士山火口



下界から運んできたガスコンロと水、カップラーメン。
今は小さなコンロの火でさえありがたい。そして至福のジャンクフード。

少しばかり絶景を恵んでもらって、清水港や三保を指差し確認する。
富士山本宮浅間大社奥宮を詣でた後、郵便局で娘たちが絵葉書を送って、余力を考えてお鉢はめぐらず下山する。





下りはまた過酷な道のりとなった。
標高と反比例して疲れと足の痛みが増す。
もはや表情筋にエネルギーが行き渡らなくなった娘たちに、覇気のない激励の言葉を掛けるが、ぼく自身も無表情に違いない。
エネルギーを補給するべくチョコレートを口に運ぶものの、人は疲れすぎると食べることさえ億劫になる。


そうして、ようやく、ぼくたちは生還した。




何を為すにも心技体は大事、きちんと整えなければならない。
それからもうひとつ、道具も。

ぼくがここまでボロボロになったのは、もちろんその全てに理由があるのだが、ひとつ触れておくべきは「道具」についてである。
久しぶりに物置から出したトレッキングシューズ、ソールの樹脂が劣化していて、嘘のようにみるみる崩壊したのである。
ビニルテープでぐるぐる巻いて、替えの靴下を靴の上から履くこと2回。

仕舞いには無残な姿となった。その時のぼくの足そのものにも見えた。







娘たちは言う。
「もう二度と登りたくない。」
まぁ、すぐに「二度と」など言わずに、痛みの記憶が薄れたころにまた考えればよい。